Disperazione(やけくそ)




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   1.ホテルの一室で



――――ホテルの最上階
―――― 眺めのいい部屋
―――― 三食昼寝付き
―――― 豪華シャワールーム完備
―――― しかも酒は飲み放題

・・・とくりゃ、ここはサイコーだ、パラダイスだぜ!と誰もが思うだろ?
しかし、そんないいもんじゃない。
例え飯が美味かろうと、ベッドがフカフカだろうと、この部屋から一歩も外に出られない軟禁状態だとなると話は別。豪華なこの部屋もムショと何ら変わりがない。
・・・・・・いや、もしかして『ここってムショよりヤバイんじゃねえの?』と思ってしまう最大の理由は。
この何でも揃っているステキな部屋で、今俺が大変な目にあっているからだ。





この部屋で俺と一緒に軟禁生活真っ最中なのはイヴァン・フィオーレ、CR-5の幹部の一人だ。

際立った功績もなくボスのツルの一声ってやつで幹部になった俺が気に入らないのか、いちいち突っ掛かってきやがる。

ま、別に気に入られようとも思わないし面倒臭いから適当にあしらっていたけれど。

しかしどうやらそんな俺の態度がイヴァンの怒りに更に火を注いだらしい。
ヤツは俺を押し倒すタイミングを虎視眈々と狙っていやがったんだ。

確かに俺は油断していたさ。
風呂上りで身も心もホカホカで心地良く、煙草をくれと言ったイヴァンに何の警戒心も無く近付いたさ。

けれど、ほら、俺だってオトコノコだよ。股間にビッグなマグナム(自称)ついてるよ。
まさかヤツが俺を押し倒し、女の代わりにしようと企んでいたなんて夢にも思わないじゃないか。

獣化したイヴァンに押し倒された俺は、
あれよあれよと言う間に腰に巻いてあったタオルで腕を後ろ手に縛られ全裸でベッドの上に転がされてしまった。

もしかして、いや、もしかしなくてもこの状況は大ピンチ。このままでは犯されてしまう。

男をヤッたことはあるけれど、ヤられたことはまだなくて。

「や、やめ・・・!」

焦った俺は大声を出してヤツを制しようとした。が、途中でその声をグッと飲み込む。
考えてもみろ。俺の声に驚いた他の幹部連中がここに踏み込んだららどうなる?

イヴァンに圧し掛かられたこんな姿を見られたら一生の恥だ。
意地でもデカイ声は出せない。

「イヴァン、やめろよ・・・・・」

ドアの外に漏れない程度の声でイヴァンをキツク睨みながら言ったが、しかしそんな事でこの野犬が思い止まるはずもない。
無造作に胸を弄られ尻を揉まれ

「ん・・・、ふ・・・・・」

俺の口から熱い吐息が零れた。何故か気持ち悪く思わないのが不思議だといえば不思議だったが、ま、これは生理現象だから仕方ないとしよう。

偶に漏れる小さな喘ぎに気を良くしたイヴァンの行動は徐々に大胆になり、
遂に尻の挟間に硬く熱いものが押し当てられた。

こんちくしょー!ろくに慣らしもせずに挿れやがる気か、こいつは!
ちゅーか、俺で勃つって、お前どうなの?
ばーかばーか。

頭の中で罵詈雑言をイヴァンに浴びせた。

そんな俺の心の内を知らず、イヴァンは俺の足を抱え直した。

『来る!』

俺は目をギュッと瞑り身体を硬くして身構えた。

かなり痛いだろう。
いや、絶対痛いだろう。
鼻の穴からスイカ入れるくらい痛いって本当かな。
気絶すんのかな。
サヨナラ、俺のバックバージン。

ところが、いつまでたっても思い描く最悪の衝撃が来ない。

両足を抱えらたこんな状態で放置プレイか?
それとも俺が怯えている姿をもっと見たいのか?悪趣味なやつめ。


俺がそろそろと目を開けると、それを待っていたのかのように、

『お、俺に従えばこの位で許してやる』

ありえない言葉をイヴァンはほざいた。

はあぁぁ?
・・・・・・信じらんねー。
『待て』もできなかったバカ犬がここまで来て尻尾丸めて逃げるってのか?
こっちは大股拡げてヤられる覚悟を決めたのに、どーいうことだ!?

わなわなと俺の心と勃起したチンコが怒りで震えた。
女に対しては地獄の閻魔様に舌引っこ抜かれるぞと思うくらい口八丁のヤツが、俺の前で『この位で許してやる』とは。
俺は中途半端って言葉が嫌いなんだ!
イヴァンはその言動からして、多分男ヤるのが初めてなんだろう。男が男に突っ込む。まあ躊躇するのも分からないではないが、でもなー、ここまで来たら最後までやるってのが筋ってもんだろ!?

もしかして萎えちまった?とも思ったが、チラリと見たイヴァンの息子さんは萎えてるどころか、ギンギンに勃起しておまけにカウパーダラダラで。
ま、俺も人の事言えない状態なんだけど。

とにかく今のイヴァンは、挿れる気はあるのに未知の世界がちょびっと怖くて一歩が踏み出せないガキみてえなもんなのだと俺は悟り。

・・・・・・もしかしてここは経験豊富な俺様がご指南した方がいいのか?

と、急に余裕が出た俺は、この小っ恥ずかしい姿勢のまま、

「ざけんな!やるならさっさとやれよ!おらっ!」

等と腰を振り、イヴァンを煽るような台詞を吐いてしまった。

んまぁ、俺ってばなーんて心の広いオニイさんなんでしょ?ま、イヴァンも男の身体を知っといてもいいお年頃でしょってな感じかな。

「くそ・・・・っ!」

俺の言葉に煽られて、猛ったイヴァンがやけくそのように腰を進める。
後ろの穴がマジでめりめりと音を立て・・・たような気がした。

「ぐぁっ・・・!」

尻に激痛が走る。いや、激痛なんてもんじゃない。
今さっきまで余裕ぶっこいていたのが嘘のように俺は呻いた。

やっぱ余計な事、言わなきゃよかったかも。
そう思ってももう遅い。

「っつ・・・・」

多分切れたのだろう、血の匂いが鼻をついた。

「いっ・・・・てぇ・・・・・少しは慣らしてから挿れろって・・・・・・、このバカ・・・・・・」

あまりの痛さに、自分が煽ったのだというこさえ忘れてイヴァンを睨みつける。

「う、う、う、うっせえ!・・・・って、うおっ!」

ヤツは怒鳴った後、結合部を凝視し流れる血に気付いたらしく、
ギョッとした顔をして動きを止めた。

普段血なんかイヤって程見慣れているはずなのに血相変えてやがる。
全く変なヤツだな。
今、俺の尻にヤツの竿が入っているのは、多分半分位だと思われるが、
血を見たイヴァンが、それを抜こうか、それともこのまま押し進めるのか、迷っているのが手に取るように分かる。

「くっ・・・・そ・・・・」

だが、やはりここまで来て後には引けないと考えたらしい。
イヴァンは俺の足を抱え直して腰を少しずつ動かし始めた。

うん、まぁそうだろうな。反対の立場だったら俺もそうするさ。
仕方ねえ。こうなれば身体の痛みを最小限に抑える方向に持っていった方がイイかもしんね。
そう判断した俺は大きく息を吐き、イヴァンを奥まで受け入れる準備をした。

「・・・・・・ゆっくり・・・・・・挿れろよ・・・・・・」

ダメもとでイヴァンに忠告する。

「お、おう」

バカ犬が案外素直に頷いた。
ふん、可愛いところもあんじゃねーか。
俺の忠告通りゆっくり・・・ってより、恐る恐るという感じでイヴァンが腰を進め始めた時だった。

「・・・・・・何を、しているんだ・・・・?」

「っ!!」

突然部屋に響いた第三者の声に俺とイヴァンは心肺が停止するんじゃないかという位驚いた。
半分合体したまま姿で同時に声のする方を見る。
ドアの近くにそいつは立っていた。

俺達を凝視していたのは、


ジュリオだった。