「ルキーノ、言っとくけどな、この間アンタが俺にしてくれたからするわけじゃねえぞ」
拗ねた子どものように口を尖らせジャンが言った。
「分かってるさ」
黄色い髪に指を入れ、ぐしゃぐしゃと掻き回しながら俺は答えた。



 黄色い仔犬




『フェラチオは無し』
ジャンと身体の関係を持ってからというもの、
はっきり決めたわけではないが、俺達の間には何となくそんな雰囲気が流れていた。
フェラチオされるのは嫌いじゃない。むしろ好きだ。しかし、あれは実は余程相手を信用していなければできない行為でもある。
一歩間違えば男のシンボルに歯を立てられ再起不能・・・・なんて悲しい事態にもなりかねない。
だから俺は今までオーラルの相手は慎重に選んできた。
ああ、勿論、今まで俺のブツに頬ずりして『凄い』だの『大きい』だのと賞賛していたのは女だ。しかし、今の俺の相手は、同じブツがついている男、ジャン・カルロなのだ。
勿論ジャンを信用していないわけではない。が、同性のブツをフェラするのはどうだろうか?
ジャンが俺のを銜える姿を想像したが、
・・・・・・・・あの気の強い男がするわけねぇな。
モヤッと浮かんだ想像は一瞬で消え、
反対に、俺がジャンに奉仕する姿を想像しようとしたが、
こちらは一瞬たりとも浮かばなかった。
うん、俺に限ってありえねえ。
そう思っていたんだが。

それをぶち破ったのは俺自身だった。
カポとして頑張っているご褒美だと称しジャンのペニスを銜えたのだ。
「ジャンの悦ぶ事をしてやりてえ」と自然に思った末の行為。
自分ですら想像しなかったまさかの奉仕活動だったが、驚いた事に嫌悪感は全くなかった。それどころか、フルフルと震える目の前のブツを、愛しいとさえ思ってしまった。
戸惑うジャンの腰に手を回し、ベロベロと舐めしゃぶりイかせた。

それが数日前。

それから今日までの間、俺達は何回かセックスをした。
その度に、『ルキーノがしてくれたんだから俺もしなくちゃ』
そんな決意みたいなものを俺はジャンから感じ取っていた。しかし俺はジャンにフェラチオをさせる機会を与えなかった。
してくれれば確かに嬉しい。が、してくれたから、する。
そんな義理でお返しされるものなど、俺はいらない。
俺がそうだったように、ジャンが自然にその気になってくれたらそれでいい。
こういう事は強制することじゃないから。
そんな風に思っていたのだ。


その日、いつもの通りジャンとホテルで食事を終え・・・いや、いつもと少しだけ違ったのは、食後にケーキが出てきたことだろうか。

「何だ?これは」
頼んでねえぞと訝しがる俺に、
「やーっぱりな〜。おいルキーノ、自分の誕生日ぐらい覚えておけよ」

そう言ってジャンは笑った。

「俺の誕生日なんてよく覚えていたな」
「まーねvv」

そう言ってウィンクを寄越した。

「プレゼントはないのか?」
「おいおいおい、自分の誕生日忘れていたヤツが思い出した途端にプレゼントの催促かよ〜?」

呆れたように笑い、そりゃそうだと俺も笑い返した後、思ったより甘くないケーキを二人で食い、俺達は店を後にした。



部屋に戻った途端、ジャンがいきなり俺に抱きついてきて、「プレゼント、あるぜ」と耳元で囁いた。

「っん・・・・・」

そのあと直ぐにジャンに唇を塞がれ、いつになく積極的なジャンに驚きながらも舌を絡めた。

「っふぅ・・・・」

暫くお互いの唇を貪り合って、惜しみつつ唇が離れた後、

「驚いたか?ん?」

ガキが『イタズラ大成功!』と喜ぶのと同じ目で、ジャンが俺を覗き込む。

「少しは、な」
「プレゼント、色々考えたんだけどさ、 アンタ、何でも持ってるし。欲しいモノなんて俺の熱〜いキスしかねえだろ?」

ジャンはそう嘯くと俺の首に手を回し、耳元で、

「俺、ルキーノの、したい・・・・・・」

囁くように言った。
オーラルセックスのことだと俺は直ぐにピンと来た。

「俺、アンタを・・・気持ちよくさせてぇんだよ・・・・・・・・・・」

もしかして不安だったのだろうか?最後の方は蚊の泣くような細い声で。
俺は抱き返しながら、片手でジャンの頭に手を置き、ポンポンと軽く叩く。
ああ、こいつは本当に可愛いヤツだ。

「ルキーノ、言っとくけどな、この間アンタが俺にしてくれたからするわけじゃねえぞ」
拗ねた子どものように口を尖らせジャンが言った。
「分かってるさ」
黄色い髪に指を入れ、ぐしゃぐしゃと掻き回しながら俺は答えた。

・・・・・・いいだろう。
してくれたから、する。ではなく、したいから、する。
この違いは大きい。
ジャンがその気になってくれたのだ。嬉しいことだ。
遠慮せずやってもらおうじゃないか。

どっかりとソファに座り前を寛げるとジャンが脚の間に跪いた。

「その・・・・・・、アンタより上手くねえかもしんねーけど・・・・、一応練習・・・・・してきたからさ・・・・・」

俺のペニスに手を添えながらジャンが不安げに口にした台詞に少しばかり違和感を覚える。
ん?
今変な言葉を聞いたような気がしたが・・・・・・
練習・・・・と言ったのか?
おい、練習って何だ?
そう問いただそうとしたのだが、その前に俺のペニスはジャンの口腔に呑み込まれてしまった。

ピチャピチャと、仔猫・・・いや、仔犬がミルクを舐めるような音がする。
「どう・・・だ?気持ちイイか?」
性器を咥えたまま俺を見上げる。その卑猥な目つきに興奮がより高まった俺は、
「・・・・・っ、フェラ、嫌いな男なんていねえんだろ?」

ジャンが以前使った台詞をそのまま返した。
ジャンはホッとしたような表情を浮かべて、また俺のペニスにむしゃぶりつく。

「っ・・・・、んっ・・・・・」
温かく柔らかな内側で括れを擦られ、その刺激に深くにも声を漏らしてしまった。

「すげ・・・アンタのまたデカくなった・・・・」

俺の漏らした声に気を良くしたのか、ジャンは嬉しそうに尚一層俺の熱を愛撫した。
口に収まりきらない部分は指を使ってやわやわと扱かれている。
頬を窄め頭を上下に動かす必死な姿が愛おしい。たまに絡み合う視線は欲情に濡れていてまた格別だ。

「くっ・・・・・」

これはマジでヤバイ。相当クる。何かで気を紛らわせないと呆気なく達してしまいそうだ。
そう思った俺は、ジャンの下半身に目をやった。
俺のをしゃぶりながら興奮したジャンのペニスがズボンの布を押し上げている。よし。
それを苛めて気を紛らわせるんだ。

「何だ?ジャン・・・、俺のをしゃぶってこんなにデカクしてるのか?」

足でズボンの上から勃起しているジャンのペニスを揉むようにすると、

「っ・・・・ん・・・・・ぁ・・・」

恨みがましい目が一瞬俺を見上げ、『負けるもんか!』とばかりに深く銜えられた。

「なっ・・・・、くそ・・・・」

負けず嫌いなやつめ!
足の指を使って少し強めにグリグリと押し付けると、意地っ張りの黄色い頭が更に激しく上下に動いた。

足と口淫。
比べたら・・・・・というか、比較にならないほどお口の方が当然いいわけで。
悔しいが限界だった。
惚れてるやつにしゃぶられてるんだ、早ェのも仕方ねえと俺は自分を慰め、射精への道を駆け登った。。

「くっそ・・・・・・、出すぞ。ジャン、放せ・・・」
「んぐ・・・・・、んぐ・・・・・・」

射精は直ぐ目の前だ。でもジャンに青臭い精液を飲ませるつもりはなかった俺は、銜えたまま放そうとしないジャンの頭を掴んだ。
しかしジャンは一瞬俺を見上げニヤリと笑い、頬を窄めて竿を扱き上げた。

「バカ、放せって言って・・・・・・・・・・・・、・・・・ぐっ・・・・・・」

遂に堪えきれず、俺はジャンの口の中に熱い液を放った。
射精後もジャンの舌は俺のペニスに絡みつき、尿道に残る精液も吸い上げた。



「いやぁ、思わず飲んじまったけどよ・・・・・・

思っていたより不味ぃのな・・・・・とジャンは苦笑いを浮かべたあと、妙に嬉しそうな顔を俺に向けた。

「そういや、ルキーノ、おまえ結構早かっ・・・・ぐげっ!」

煩ぇ。
ジャンの頭にゲンコツを落とし、それ以上台詞を言わせなかった。

「いってー!何すんだよ!」

黄色い頭を擦りながらジャンは文句を垂れた。
全くコイツと来たら、『上手くできねえかも』なんて不安な顔していたくせに、俺がほんの少し早くイっただけでもう付け上がりやがって。

「上手くできたんだから褒めてくれたっていいじゃねーか。ったく、せっかくあんなに練習したのに・・・・・・・」

そうだ。さっきは思わず聞きそびれたが、練習って、何だ?
まさか・・・・俺以外のヤツのを銜えた・・・・・・?
ムッとした表情をしていると、俺の心の中を読んだのか、

「ま、練習っつっても、さすがに『フェラのテク上げたいからチンコ貸して〜』なんて、誰にも言ってねえから安心しろ」

と、とんでもない台詞が返って来て、

「ぷっ」

俺は思わず吹き出してしまった。

「当たり前だ、ジャン。俺以外のヤツの銜えるなんて許さねえからな」
「へいへーい。って、あーあ、バナナは当分食いたくないぜ」

ジャンはそう言って肩を竦めた。
そうか、練習台はバナナだったか。

「おい、ジャン。当然デカくて太いバナナ選んだろうな?」
「んーーー、まーね。あんたの、無駄にデカイし」

よし。よく言った。

さてと。
夜は長い。
無駄にデカイのを挿れてやるから覚悟しておけとばかりに
俺はジャンを押し倒した。

ルキーノ誕生日祝。
てか、ウチのルキーノは精神年齢低いな(笑)



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