どうせみんな最後は死ぬんだ
        だったら格好良く逝きてえよなぁ
        若ぇうちにぱあッと一花咲かせて散ったら伝説になれっかな

     あれは暑い日だった
     二人でメルセデスに乗り込み、走って走って海まで出て
     ギラギラする太陽の下で生温くなったコーラを飲みながら、あの頃はまだ若かった彼が言うと

『まぁな、よぼよぼの爺さんになって権力にしがみ付いているより、そっちの方がカッコイイかもしれねえけどさ』
でも、と、寄せては返す波を見ながらジャンカルロは言葉を続けた
『人間死んだらそれでオシマイじゃん』
大勢の心に残らなくてもいい、自分の大切な人にだけ覚えてもらえていればそれでいいさと、
いつになくしんみりとした様子で語った後、
『ま、俺達は爺さんになってもでっけえ花、咲かせてやるけどな』
だろ・・?そう言いながらジャンカルロは彼の方に顔を向けて片目を瞑った
『俺達』という言葉が嬉しくて、でも少しだけ照れくさくて、「おう」とだけ彼は答えた
そんな彼にキスを仕掛けてきたのはジャンカルロだった
汗の匂いがした
煙草の匂いも、海の匂いも、太陽の匂いも
次々と鼻腔に入ってくるジャンカルロの匂いに彼の脳内は痺れ、気がつけば夢中で目の前の唇を吸っていた
名残惜しげに唇を離すと『死んだらこんな風にキスもできなくなっちまうしな』ジャンカルロは笑い
その笑顔を、彼は眩しいと感じた

死が必然だと、生きているのが瞬間なのだと言ったのは誰だっただろう
その儚い瞬間の中でジャンカルロと出会えたことは奇跡に近いのかもしれない
あまり祈った事がないが、それだけは神に感謝しても良いと彼は思った      next→