あの夏の日の帰り道、運転していた彼は、助手席のジャンカルロにそういえばさ、と切り出した
『さっき何か言ったか?』
『さっきっていつだ?』
『俺が寝てるとき』
『いんや、別に』
ジャンカルロは素っ気なく答え、
何食わぬ様子で助手席から見える景色を眺めていた
やっぱり夢だったか・・・ま、そうだろうな・・・と思いながら彼がチラリと横を見ると
ジャンカルロが耳を真っ赤に染めているのが目に映った
首の辺りも赤い。横を向いているのでよくは見えないが、きっと顔も真っ赤に違いない
(・・・・・・騙されてやるよ、このウソツキめ)
流れる景色を頑なに見続ける横顔に、彼は心の中でそう呟き、気分良く二人が暮す部屋まで車を走らせた
※
頬を撫でる風が少し冷たくなってきた
見上げると
高く青かった空は茜色に染まっている
「そろそろ帰るな」
『えー、もう帰んのかよ』
口を尖らせるジャンカルロの顔が、茜の空に見え隠れした →next