最悪











寒い。
それに背中がやけに痛い。
まるで硬い床の上に寝ているみたいだ。
刑務所のベッドだってもっとマシだったような気がする。

ここは何処だ?
何だか頭もズキズキ痛む。
どうしたんだ?もしかして飲みすぎ?
いや、これは内側からの痛みじゃねーな。
ん?俺、頭打ったのか?
いつ?
昨日の晩は皆で酒を呑みに出掛けたんだっけ。
久しぶりに幹部五人が全員揃ったんだよな。
ルキーノは相変わらず偉そうで。いい女全部自分の横に侍らせて。
イヴァンがそれを見て、「ずりぃぞ」とか文句言いながらも目は怒っていなくて。
少し遅れて来たベルナルドが俺をハグしながら、「ハニー、久しぶりだね」とベタベタ触ると、
「ジャンさん、くっつきすぎ・・・です」なんて、俺の後ろでジュリオがちょっぴりベルナルドに嫉妬したりして。
半年前、皆で脱獄した時の話を思い出して懐かしんだり。
うん、楽しかったなぁ。
散々飲んで笑って騒いで。
皆も同じ気持だったんだろう。
『楽しかったぜ、近いうちにまた飲もう』と言い残し、一人、また一人抜けて行き、
最後は俺とジュリオが残ったんだ。
さてと、俺達も帰るか。
同じ部屋に住むジュリオに声を掛けると「はい、ジャンさん・・・」とジュリオが笑みを浮かべて。
その顔がカワイイなんて思いつつ、俺はジュリオを伴って煙草とアルコールの匂いが充満する店を出た。
店を出ると直ぐにジュリオの部下が近付いて来て。
何事かを耳打ちすると、ジュリオの顔が急に険しくなって。
ん?何々?どしたの?
俺が聞く前にジュリオが

「ジャンさん・・・、スミマセン・・・・・・、仕事、入りました。一件だけ片付けてから、すぐ帰ります・・・・」

申し訳なさそうに言うのを見て、

「いや、お前も大変だよな・・・」

そう言って労い、何度も振り返るジュリオに「気を付けて・・・な」とヒラヒラ手を振って見送ったんだ。
ジュリオの部下が、「部屋までお送りします」と言ってくれたけれど、アルコールで火照った身体に夜風が気持ち良かったから、それを断って歩き出して・・・・・
それからどうしたっけ??
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・あ、そうだ。
歩き出して何本目かの路地裏で、女の悲鳴を聞いたんだ。
気になって声のした路地に入って行って・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それで・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
ッ!!!!!!
そうだ。
いきなり後ろから頭を殴られたんだ。













そこまで思い出し、ジャンははっと目を見開いた。
薄暗い部屋。うっすらと目に映る天井に見覚えはない。
ここはどこだ?
辺りを見回そうとしてジャンは自分の身体が動かないことに気付いた。
両腕は纏めて縛られ頭の上にある。
なんだ、これ!
驚いたジャンが慌てて腕を動かすと、ジャラリと低い鎖の音が響いた。鎖は剥き出しの錆びた支柱に巻かれ、ちょっとやそっとの事では外れそうにない。
更に驚愕したのは両足。長い一本の棒が膝の裏に挟み込まれ、思い切り開かされた状態で拘束されていた。
しかも全裸で。
何処かもわからない部屋でこんな姿にされている状況にジャンは焦ると同時に、
意識を失う寸前、必死に振り返ったジャンの目に映った男が脳裏に蘇り嫌な汗が流れる。
―――― アイツに連れ去られたとなると状況はかなり不味い。何とかしてここから逃げ出さないと。
ジャンは何とか手足を動かしたが、拘束はどこも緩みそうもなかった。

「無理無理、逃げらんねーって」
「っ!」

ふと男の声が聞こえ、それまでこの部屋にいるのは自分一人だと思っていたジャンは驚いて身体を震わせた。

やはりアイツだ。
聞き覚えがあるねっとりした喋り方に全身が強張る。
しかし決して弱気な態度を見せてはいけない相手だ。

「てめぇ、俺をどうする気だ!」

怒りを露にして叫ぶ。すると黒い影がゆらりと揺れながら、音もなくジャンに近付いた。
間近でジャンを見下ろす蛇のような目。バクシーだった。


「何が目的だ!?」

睨みながら問う。

「目的ぃ?はっ、そんなの決まってるじゃねぇか!」

バクシーはジャンの髪を乱暴に掴むと、大きな傷跡が残る腹を強引に見せ付けた。

「覚えてるか?お前もあん時見てただろ?この傷はな、狂犬に付けられた痕だ!」

覚えている。
GDに捕まった自分を、ジュリオが単身で助けに来てくれた。その時の戦闘でジュリオの鉤爪になった左手が貫いた跡だ。醜く引き攣れていて、思わず目を逸らす。

「疼くんだよ。夜になるとこの傷がなぁ・・・・」

傷跡に手を這わせバクシーが優しげな声で呟く。その異様さに慄きながら、ジャンは叫んだ。

「そんなの知るか!とっとと放しやがれ!」

動ける限り腕を振る。頭の上で鎖が鳴り拘束されている手首が痛んだ。が、そんなものに構っていられない。

「へえぇ、こーんな恥ずかしい格好させられてるのに威勢がいいんだなぁ。ひゃーひゃっひゃ」
「ぐっ!」

バクシーが笑いながらジャンの脇腹を蹴り上げる。つま先がめり込み思わず息を詰めた。

「ちくしょう、忌々しくて堪んねえぜ!お前もあの狂犬も、ぶっ壊してやらなきゃこの疼きは治まんねえんだよ!」

血走った目でバクシーが吠えた。

「つうかよ、お前、あの狂犬を上手く手懐けてるらしいじゃねぇか。お前壊したら、アイツ、怒るよなぁ、ひーひっひ」

歪んだ顔でバクシーが笑う。

ダメだ。目が逝っちまってる・・・・・。こりゃ殺られるな・・・・。
ジャンは迂闊な自分の行動を呪った。

素直に車で帰っていれば。
路地に足を踏み込まなければ。
後悔ばかりが先に立つ。

バクシーの手がジャンの首へと伸び、ジャンはその身体を震わせた。

「震えてんのか?ん?ひひひ・・・、おとなしくしてりゃ痛い目には合わせねえよ」

いい目にはあわせてやるけどよ・・・・・・舌なめずりしながら言われ、ジャンはただ単に殺すのではないバクシーの目的を悟り総毛立った。


「や、やめろ・・・!」
「止めろと言われて止めると思うのかぁ?」

嘲るように言ったバクシーはジャンの身体を反転させ、腰を掴み上げ尻思い切り押し広げた。

「やめろっ!」
「止めてやんねえって言ってるだろ?だってよぉ、屍体にしか興味がない狂犬が生身の人間に、しかも男に尻尾振ってるんだぜ?どんなイイ穴か興味あるだろ?」

獣染みた荒い息が拡げられた孔に掛かり、ジャンの背が戦慄いた。

「へえぇ。狂犬にバコバコやられて緩んじまってると思ったが、思ってたより締りがよさそうだ」
「くそっ・・・・!この変態野郎!」
「おっと、言葉に気をつけな。いい子にしてりゃ気持ちよくさせてやるって言ってんだぜ、俺は。」
「・・・・・ざけんなよ!お前にそんなコトされる位なら・・・・っぐは・・・・・っ!」

煩いとばかりにバクシーの人差し指がジャンの中に突きたてられた。
慣らしもせずいきなり挿れられたジャンの身体が悲鳴を上げる。

「ぐ・・・・・・っ」
「ひゃーはっは・・・・・痛ぇのか?」

笑いながら遠慮もなしにグイグイ奥に指を押し込まれる。

「・・・・っく・・・・・・はっ・・・・」
「凄ぇ、お前の中、もの欲しそうに絡み付いてきやがる。これでマッド・ドッグを躾けたのか?」
「黙・・・・・れ・・・・・」

肩越しにバクシーを睨みつけ、その指から逃げようとジャンはもがいた。

「なんだ、そりゃ?もっと指を増やして欲しいっておねだりかぁ?」

もがいて揺れた腰が誘ってるように見えたのか、下卑た言葉をバクシーは吐いた。
嘲笑の言葉にも構わずジャンは必死で抵抗したが指が抜けることはなく、益々奥に指を入れられてしまった。
くちゃくちゃと音を立て、内側を探るようなバクシーの指の動きにジャンは焦った。
そこを押されると弱い部分があるのだ。

「・・・・・ぁ、・・・・やめ・・・・・・っつ・・・・あああ・・・・・っ!」

ぐるりと腸壁を撫でられた最中、バクシーの指が前立腺を掠めた。

「へえぇ、ここか?」
「っく・・・、ああ・・・・や、やめ・・・・・・・うっ・・・・あ・・・・・・ん・・・・」

ジャンの変化を見て取ったバクシーが、弱い部分を執拗に責める。終わりのない快楽がジャンを襲う。

「うひゃひゃ、おい、触ってねえのに凄ぇな」

内側からの刺激だけで勃起した性器を見てバクシーが笑った。「あぁ・・・・っ!」ピンと指先で弾かれ、その刺激に高い声が零れる。

「お?いい声で啼くじゃねえか」「っあ・・・・ん・・・・っやめ・・・・」

バクシーがジャンの性器を何回も指で弾く。その度ジャンはビクビクと身体を震わせた。喘ぎ声はもう抑えることができなくなっていた。

「イきてえんだろ?素直に言えばイかせてやるぜぇ?」
「誰が・・・・・っあ・・・・・・・・お前なんかに・・・・・・っ・・・・・・・尻尾・・・・振るかよ・・・・・・・あああ・・・・っ」
「いい度胸だ。お前は善がり殺してやる。バクシー様、イかせて下さいって尻振っておねだりするまで甚振ってやるからな」

バクシーは前立腺を責めながら簡単に射精できないようにジャンの性器の根元をキツク掴んだ。

「あああああっ・・・・・!」

長い舌が膨れ上がった尿道を抉る。

「やぁ・・・・・・!」

こんな事を続けられたら狂ってしまう・・・・・・
でも、バクシーの思い通りになど、なりたくない。


「・・・・・・・・・・んぁ・・・・・・ああ・・・・・っ・・・・・やめ・・・・・・・っん・・・・・・ああああ・・・・」


ここはGDの奴らも誰も知らない俺の隠れ家だ。例え鼻が利く犬だってこの場所は決して分かりゃしねえよ
死ぬまで俺が可愛がってやるぜ・・・・


快楽に支配されたジャンの耳にバクシーの声が響く。


俺はもう、逃げらんねえのか・・・・・・?


ジュリオ・・・・・・





ジャンの脳裏に


ジュリオの顔が浮かんで


そして消えた。





ジュリオ×ジャン前提のバクシー×ジャンのエロが書きたかっただけ
この続きは【生意気な犬の躾け方】でどうぞ(エロしかありませんが)



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