おれ、あすかのことが、すき。
     一番、すき。
だいすき。

「俺も興さんが大好きです」

あすかも、おれのこと、すきだって、言ってくれる。

その言葉を聞くと、うれしくて、うれしくて、胸がきゅって、なる。
あすかが一番。

あすかも、おれのこと、一番。


おれ、あすか、だいすき。

だれにも、渡さない。






 ふらすとれーしょん




「興さん、美味しいですね」
「んむ」

お昼ごはん、あすかと一緒に、レストランに行った。
A定食のフライと、B定食のからあげを半分こにして、食べる。
納豆も美味いけれど、あすかと一緒だと、何でも美味い。
「はい、興さん、あーんして下さい」
「あーん」

口を開けたあすかにつられるように、口を大きく開く。
でも、あすかの手元に、つやつや光った、小さくて真っ赤なトマト、見えて、思わず口を閉じた。

「あー、ダメですよ、興さん、口閉じちゃ・・・」

あすか、時々、いじわる。おれがトマト嫌いなの知ってるくせに。

「興さん、好き嫌いしちゃダメですよ。はい、口、開けてください」

小さなトマトを持ったあすかが、ニコニコしながら、言う。

「んんーーー」

口を閉じたまま、首を横に、ふったけれど、

「食わず嫌いなだけかもしれませんよ?チャレンジしてみましょうよ、興さん。ね?」

小首を傾げて、あすかが笑い、その笑顔に弱いおれは、思わず、パカッと、口を開ける。
するりと、あすかの指が、おれの口の中に、赤い実をいれて、

んむんむんむ。
ごくり。

おれは、大きらいだった、トマトを食べた。
あすかの手、ふしぎ。
あんなにきらいだったトマト、どうして甘く感じられたんだろう。

「すっごーい!興ちゃん、トマト食べられたじゃん」
「・・・ったく、見せ付けてくれるぜ・・・」


一緒にごはん食べていた、ヒロとディオが、揃って声をあげた。
本当は、あすかとふたりきりで食べたかったけど
このふたりは、おれとあすかの仲を、邪魔しないから、いっしょでも、かまわない。

おれ、チームのみんなのこと、すき、でも、きらい、でもないけど、

でも、
藤ヶ谷、だけは、

きらい。

大きらい。

だって、あいつ、おれとあすかの邪魔、するんだ。
きっと、
藤ヶ谷も、あすかのこと、すき、なんだと思う。
もちろん、みんな、あすかのことは、すき、だけど、
でも、藤ヶ谷のすきは、みんなと違う。
おれと、おんなじ、すき。


どうして判るのかっていうと、
今まで誰が声をかけても、
ふん、ってそっぽ向いて、誰とも群れようとしなかった藤ヶ谷が、
あ、ほら・・・・・

「おーい、慧、ここ、席空いてるぞ」

混雑したこのレストランで、あすかが一声かけただけで、

口の端に微かな笑みさえ浮かべて、こっち、来るから。
あすかを見る、藤ヶ谷の目、すごくすごく、
優しい。

あの目、おれ、知ってる。

おれと、おんなじ。








来なきゃいいのに、って思っていた藤ヶ谷が、あすかの前の席、座って、
しなきゃいいのに、って思っていた小さいころの話を、藤ヶ谷が、あすかに振る。

あすかと藤ヶ谷は幼馴染。それは仕方ないこと。
でも、子供の頃のはなしをしてる時、
懐かしそうに目を細めるあすかには気付かれないように、
優越感に浸った顔で、おれのとこ、ちらって、見る。

今日だって、教室間を移動するあすかに気付いて、おれが窓から声、かけようとしたら、
藤ヶ谷が、俺から、あすか隠すように立ちはだかった。
おかげで、おれ、あすかに声、かけられなかった。

あれ、絶対、わざと。
藤ヶ谷は、いじわる。
おれと、あすかのこと、邪魔する。
そして、何よりずるいのは、それをあすかに気付かせないところ。
おれだけに、伝わる、敵意。

すごく、胸、むかむか、する。
挑戦、されてるのが、わかる。
でもおれ、まけない。
あすか、おれの、もの。


「ねえねえ、あすか。今日の午前中、なにしてた?」

昔話に興じる、ふたりの会話にわって、はいる。

「えーと、授業受けていましたけど、興さんは?」
「あすかのこと、考えてたーww」
「ぶっ!」
「え?ちょ、興ちゃん!?」
「は、興さん・・・」

そこにいた、ディオが飲んでたものを噴出し、
ヒロが慌てたように、おれを見て、
あすかが、ちょっとだけ、こまったような声、出した。

みんな口々に、ダメだよ、とか、そんなんじゃ留年しちゃう、とかワイワイ言う中で、
藤ヶ谷だけは、 あからさまにムッとした顔で、おれのこと、睨んでたけど、
これ、午前中、あすか隠した、お返し。
ふふーん。

本当は、もっと、おれしか知らない、あすかのこと、藤ヶ谷に、自慢したい。
例えば、あすかの寝顔がどんなにカワイイか、とか、
えっちなことをしている最中、
すごくカワイイ声で啼くんだとか、
いっぱい自慢したいけれど、
そんなことをしたら、きっとあすか、照れて、真っ赤になっちゃう。
そのときの、あすかの顔、すごくカワイイ。
それを藤ヶ谷に、見せてなんか、やるもんか。


藤ヶ谷の邪魔、できたことに心の中でニンマリして、あすかの顔をみると、

あ・・・・、あすかの口の端、何か白いものがついてる・・・・
サラダにかかっていた、シーザードレッシングが口の端についていて。
ふふふ、あすか、かわいい。小さなこども、みたいだ。
おれが、舐め取ってあげよう。

藤ヶ谷に、あすかとおれの、ラブラブぶり、見せつけてやれる、いいチャンス。



「あすかー、口のとこ、何かついて・・・・・・・・・・
ぷぎゃー!


思わず変な声、出たのは、

「明日叶、唇の横、何かついてるぞ」
「え?ど、どこ?」
「ほら、ここだ」
「あっ・・・・あ、、ありがとう、慧」

腕を伸ばした藤ヶ谷が、あすかの口の横についた白いドレッシングを親指でそっと拭い、
こともあろうに、おれにみせつけるように、その指をペロリと
舐めたからだ。

しかも、あすか、真っ赤になって照れた顔、してる・・・・・
ううううーーーーー!
その顔、藤ヶ谷には見せたくなかった、のに!

悔しくて悔しくて内心で唸っていると、
おれにだけ見えるように、口の端をあげてニヤッて、藤ヶ谷が笑った。




ううううううううううううう・・
・・うーうーうー!





おーのーれー


ふーじーがーやーーーー!





メラメラと、闘争心に、火、ついた。

近いうちに、藤ヶ谷と、勝負して、絶対ぎゃふんと
言わせてやるからな。


おぼえてろよ。
おぼえてろよ。
おぼえてろよ!




興先輩の捨て台詞で終わり(おい)
この2人の闘いは(明日叶の知らないところで)果てしなく続くのでしょう。

いや〜〜、ドラマCDの興先輩編の内戦勃発(?)がドツボに嵌りまりまくったので思わず歪曲。
ちゅーか、興先輩だけを黒くするつもりが、慧まで腹黒キャラになってしまった。
腹黒というか、すでに悪人。何故だろう(^^;)
楠本×明日叶←慧?というよりも、興先輩VS慧の方が合っているかもしれません。

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