The tune don't stop sounding.

いつまでも響き続ける

















 朧月夜の夜曲
(セレナーデ) 










「おい、ジャン。昼間やけにベルナルドにベタベタくっついてたよな?」
「そういや昨夜ルキーノと飲みに行ってたんだって?」
「さっきジュリオの奴と、なに話してたんだよ」

心配そうな顔でイヴァンが俺に詰め寄る
おいおい、またですか?
なんて判りやすいヤツなんだ・・・・・と思いながら

「んあ?ベルナルドとひっついてたか?俺?あんま意識してなかったけどな」
「ルキーノのやつがさ、高価な酒飲ませてくれるっつーからさ」
「別にいいじゃんか、何話してたってよ」

淡々と答える

「つーか、なに?あいつ等に嫉妬してるのけ?」

そう付け加えると、

「し、嫉妬だと!?だだだ、誰がンなもんするかよヴォケ!」
イヴァンは顔を真っ赤にして怒り出した

「た、ただ、俺はよ、心配っつーか、俺以外の奴がお前にベタベタしてっとムカつくっつーか・・・だからその・・・」

うあー、ホント、莫迦だね、こいつ
だからそれをGelosiaって言うんだってば・・・と、教えてあげた方がいいのだろうか

ていうか、イヴァンちゃん、あいつ等いろいろ判ってて
わざと俺にベタベタひっついたりしてるんだと思うよ
弄られてんのは、俺じゃない
多分お前の方

それに気付かず、わざわざ反応してしまうのが
単純つーか
莫迦っつーか
可愛いっつーか
なんだけど、な


「ああもう!おい、ジャン、こっち来いよ」
言葉が続かなくなったイヴァンは
強引に俺の腕を取って自分の方に引き寄せた
苛立ったような顔が俺の目いっぱいに広がる
そして
「・・・くそ・・・・っ」
低く呻いた後、俺の唇を塞いだ

「んっ・・・・・、はぁ・・・・・」

――――
 ムカつくんだよ、勝手に触らせてんじゃねえ、心配なんだ
―――― 誰にも渡さねえ、俺だけのもんだ
嫉妬心をそのままぶつけてくるようなイヴァンの舌が
俺の口腔を貪るように動き回り

「ふ・・・・ぁ・・・」
吐息までも奪われた


「くそっ・・・、キスだけでこんなに硬くしやがって。ったく、どんだけエロい身体なんだよっ」
俺の下半身に手を伸ばしたイヴァンが、怒ったように吐き出したけれど、
ば、莫迦!、お前だって勃ってんじゃねえかと反論する前に床に押し倒されて
下肢を剥かれ、熱くなったブツを直接握られる

「んっ・・・・あ・・・・」
「もうこんなにドロドロになっていやがる・・・・・」

いや、多分お前の方が凄いことになっちゃったりしてると思うぜ・・・と言いたかったけれど
そのまま手を上下に動かされて、
俺の口は意味を成さない高い声しか出せなくなった

「ちくしょう・・・お前は俺だけのもんだからな」

呻くように言った後、イヴァンの熱が侵入し
感じる場所を擦られ激しく揺さぶられた俺の頭の中は真っ白になり、
いつしか俺は気を失った








『ジャン、ジャン・・・・』
耳許で名前を呼ばれ、閉じていた目を薄く開くと、イヴァンが心配そうに俺を覗き込んでいた
「すまねえ、無理させちまった」

おいおいおい、あんだけガツガツやっといて今更何言ってんだよ
調子狂うな、まったくもう
って、よく見るとドロドロになっていたはずの身体は丁寧に拭かれていて
寝ている場所も、床じゃなく、ちゃんとベッドの上で
本当は酷く腰が怠いというか痛かったんだが、そこは痩せ我慢して
「俺は大丈夫だからそんな心配そうな面すんな。つーか拭いてくれたんだろ?あんがとな」
と、シュン・・・と頭を垂れている頭をペチペチ叩いてやった
すると、イヴァンは「礼なんて・・・」とだけ返事をし、俺に背を向けた格好でドサリと横になった
照れてやがる・・・・・
そう判ったのは、イヴァンの耳が真っ赤になっていたからだ



横になったイヴァンから規則正しい寝息が聞こえ始めた
俺はイヴァンを起こさないように
そっと身体を起こし、痛む腰を摩りながらフカフカの枕を背にヘッドボートにその身を預ける
そして、、スヤスヤ眠るイヴァンを見下ろした


心配性で
独占欲が強いイヴァン
傍から見たら、イヴァンの方が、より強く俺の事を好きなのだと感じる奴が多いかもしれない
イヴァン自身、そう思っているだろう

でも本当は違う



『ああ見えて割と几帳面だな、イヴァンは。字も綺麗だし』
「へー、そうなのけ?」

『案外サッパリしていて付き合えばいい奴だな。莫迦だけど』
「あはははは」

『俺、イヴァンの統率力は、凄いと思います』
「ふーん・・・」


イヴァンに対するあいつ等の評価は、


イタリア系じゃねえからって
だから上にのし上がれねえって
勝手に決め付けてるイヴァン自身より、
ずっとずっと高いところにある


几帳面なのは知ってるさ
眉間に皺を寄せながら書く文字が
繊細なことも
口は悪いけど、相手を思いやることも
統率力があることも、
全部、知ってる

イヴァンが褒められると俺は嬉しい
凄ェ嬉しい

でも、
他のやつらがイヴァンを褒めると

なんつーか、
少しだけ
いや、ホント、少しだけなんだけど、

モヤモヤとした感情が胸の中に芽生えるんだ




自分だけしか知らなかった秘密を
他人に知られてしまって拗ねてるガキみたいなそんな心境

たぶんこれも嫉妬の一種なんだろう



フガ・・・・・とイヴァンが軽く鼻を鳴らした


今は俺しか知らない、
こいつの良いところも、いずれは皆に知られてしまうだろう

でも、

こんな風に
無防備な寝顔が子供みたいで可愛いことは
誰にも知られたくない

俺だけのもんだ



独占欲丸出しの自分に

畜生、これじゃイヴァンに『嫉妬なんてすんな、この莫迦』だなんて到底言えやしねえ

参ったね・・・・と呟きながら
こんな事を話すとイヴァンを付け上がらせるだけだから黙っておこうと

部屋を照らす月を見上げ、俺は思った



甘すぎて消えてしまいたいほど恥ずかしいのでさっさと逃げます
ε=εε=ε=εε=┏( >_<)┛ピューーー!


                   LUCKY DOG1 nemu