Evening glow















あんなに降っていた雨はいつの間にか止んで、遠くの空には真っ赤な夕焼けが広がっていた


「違うノートに乗り換えるなんて、そんなのよくある事じゃん・・・
明が自分で選んだんだから、仕方ないじゃん・・・」


自分に言い聞かせるように呟いた乾いた声が、思いのほか切なく辺りに響く


明だったら、あの気難しい響とだって
きっと上手くやって行ける筈


「約束・・・・・守らないとな・・・・・・」

震える手で、僕はある場所に手を伸ばした



約束したんだ

『響きの家を出たら明の名前を消すから』と・・・・


書かれた文字を指でそっとなぞる



『緒方 明』


殴り書きのような汚い字で書かれたその名が
今はとても愛しくて

そして


切ない







雨上がりのこの道を二人で水溜りを避けながら
明と一緒に帰りたかったよ




手を繋いで歩きながら
「夕焼け、綺麗だな」
そう言いながら二人で一緒に帰りたかったよ




「ただいま」って
笑顔であの家に戻りたかったよ



ご飯を食べたり
ゲームをしたり
時には喧嘩もしたり
同じ数だけ仲直りしたり



そんな些細な出来事が幸せだったのだと
明を失って初めて気づく


もうあの楽しかった時間は戻らないのだと思うと
辛くて寂しくて哀しくて胸の奥がギュッと締め付けられるけれど

響と契約する事で明が幸せになれるのなら

仕方がない事なんだよね









サヨナラ、明

元気でね

今度拾われるのが、
また明みたいな奴だったらいいな


明の幸せを祈っているからね



無理矢理作った笑顔は何故か歪んで
代わりに涙がポロポロと零れる




サヨナラ、明




最後にもう一度愛しい名前を呟いて


滲んだ赤い空を見上げながら




パステルで書かれたその名前を



撫でるように



僕は消した





暗いわー、ほんと暗いわー^^;


のーとんTOP