「なぁ、兄貴、誕生日プレゼントに、何か欲しい物ある?」
そう聞いたことがそもそもの間違いだったのかもしれない。
明は今、一着の服の前で頭を抱えていた。













 
あてにならない君の約束











光輝の誕生日が差し迫ったある日、何か欲しい物はあるかと聞いた明に、
「プレゼント?・・・要らないよ。気持ちだけで十分だよ」
光輝は優しく微笑みながら答えた。
まだ学生である明の懐具合を心配して遠慮しているのかと思いきや、ニコニコ笑いながら断る光輝にその様子はない。
本当に明と過ごせる事が一番のプレゼントだと思っている笑顔だ。
明としては、それはそれで嬉しい。が、やはり好きな人の誕生日に何か贈り物をしたいと思うのは至極当然の気持ちでもある。
ここで「はい、そうですか」と引き下がるわけにも行かない。

「そんな事言うなよ。バイト代も入ったし」
「うーん・・・、困ったな・・・。気持ちは嬉しいけど、俺は明と一緒に過ごせればそれだけで嬉しいんだ」
「・・・・・っ・・・」
さらっと言い放った光輝の言葉に思わず明の顔が赤くなる。
何故弟にこんな恥ずかしい言葉が言えるのか不思議に思う。
もしかして頭のネジがどこか緩んでいるのではなかろうか?と疑ってみたりする。
しかし光輝は頭が悪いわけではない。れっきとした医者である。
頭どころか顔も性格もいい。
そんな兄は、少し前まで明にとってコンプレックスの塊でしかなかったが、二人で暮らすようになってからはその思いも徐々に薄れ、今では対等とまではいかないけれど、出来の良い兄に釣り合うよう努力している最中だ。

一緒に暮らすようになって、光輝の明に対する甘やかしは更に増した。
「明が喜ぶと思って」「明に似合いそうだったから」
常に明が中心の光輝は、事あるごとに明にプレゼントを贈った。明としても兄の気持ちは嬉しかったが、心苦しい思いもどこかにあった。
貰ったは多々あれど、その逆は・・・となると殆ど無いのだ。
片や医者。片や大学生。
金銭的な面で光輝に頼り切っている事は否めない。
それでも何とかアルバイトで資金を調達し、日頃から何かと世話になっている兄に感謝の気持ちを込めた贈り物をしたかった。
プレゼントを開けた時の、そのの驚くような、そして喜ぶ顔が見たかったのだが。
(兄貴の欲しい物って何だろう・・・?)
悲しいかな、一番重要な事が思いつかなかったのだ。
そして、自分に不甲斐なさを感じつつ本人に直接聞いてみるという最終行動に出たのが冒頭の、

「なぁ、兄貴、誕生日プレゼントに、何か欲しい物ある?」だったのである。





「で、でもさ、せっかくの誕生日なんだから・・・。つーか何か一つ位あんだろ?あー、もう!何でもいいから考えてさっさと言えよ!」
光輝の物欲の無さに焦り、後半はつい怒鳴ってしまった。
(これじゃまるで喧嘩を売ってるみたいじゃないか。自分が何も思いつかないからって、八つ当たってどうするんだよ、俺)
自分の言葉尻が流石に悪かったと反省しつつ光輝の顔を恐る恐る窺うと、

「・・・明・・・、今何いいでも・・・って言っよね?それは【物】じゃなくても、いいのかな?」

兄は明の口調の悪さには然して意に介さず、無意識に放った明の言葉の方に反応した。

「・・・へ・・・?・・・・あ、・・・・ああ、いいぜ」

形に残る物ではなくても、最終的に兄が喜んだ顔をみせてくれるのならそれでOK。そう思って了承した明だが。

きらり。

・・・え?い、今光らなかったか?兄貴の目・・・
一瞬光ったように見えた光輝の目に、何かとんでもない返事をしてしまったのではないかと、明は胸騒ぎを覚えた。

兄でもあり恋人でもある目の前の光輝は確かに明に甘い。が、、実は夜になると明に数々の変態プレイを仕掛けて啼かすというとんでもない男なのだ。
ま、まさか。
不安が明の胸を覆う。

(まさか誕生日に託けて要求されるのは俺の身体か?あんな不埒な事や、こーんなエロい事をさせられるのか・・・?)
(まさか縛られて色々な道具で責められ喘ぎまくるのか?)

あらぬまさかの妄想が次々と膨らみ、何故『いいぜ』等と言ってしまったのだろうかと明は自分を責めた。
(間に合うか?まだ間に合うのか?断れ、自分!)
首を横にブルブルと振りながら、
「あ、いや・・・ちょ・・・い、今のきゃ・・・」
【却下】
そう言い掛けたのだが、その前に、

「そうか、何でもいいのか」

思い切り目じりを下げて嬉しそうな光輝の笑顔が目に映り、今更「却下だ」と言えない雰囲気になってしまった。

「それじゃ明にお願いなんだけど・・・」
(うっ、来た!お願い!)

兄のお願いなど、どうせきっと変態の類に違いない。
裸エプロンを要求されるのか、はたまた全裸で出迎えろ。位のお願いは覚悟しなければならないのか。
明が戦々恐々と光輝の次の言葉を待っていると、

「当日は俺が用意した服を着てもらいたいんだけど」
「ふ、服ぅ?」

思わず声が裏返った。それはそうだ。
明の頭の中で、既に自分は裸族だったのだ。それが「服」である。明は内心ホッとした。
「うん、実は明に似合うと思って内緒で注文しておいた服があるんだ」
(あ、もしかしてあれか、あのスーツか!)
明の脳裏に、先日連れ立って光輝のスーツを買いに行った時、「明にはこの色が似合いそうだな」と行っていた兄の言葉が思い出された。
スーツなんて着ねえしいらねえ。その時は突っぱねたけど。着てもらいたい服って、多分それだろう。
プレゼントする気が逆に貰ってどうするよ?とまで頭が働かない。それで兄貴が喜んでくれるのなら。

「ああ、そんぐらいOKだ」
「良かった、嬉しいよ。服は当日までに用意しておくから」

こうして明は光輝の願いを笑顔で了承したのだった。







そして迎えた誕生日当日の朝。

光輝が出掛けた後、いつものようにのそのそと布団を這い出しリビングに行った明は、部屋の景色が何となく違う事に気付いた。
冬の柔らかい光が降りそそぐ窓辺には淡い色をしたカーテンが。
キッチンのテーブルもいつもと変わらず簡素で。
しかし、
ソファの上には見慣れない物体があった。
(ちょ、ちょっと待て。いや、待ってください。あの黒い物体はナンデスカ?)
慌ててソファに駆け寄る。
そして、「うげーーーっ!!」それを見た明は思わず叫び仰け反った。
それを掴んだ手がわなわなと震える。驚きの余り見開かれた明の目に映っていたのは、想像していたスーツではなく、

どこからどう見てもメイド服だったのである。






   ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★






それは兄の好物を揃えいつもよりちょっと値が張るワインを買い、
二人だけのパーティの準備を整え、
用意されたメイド服に着替え終えた矢先の事だった。




「えー?マジかよ!」

携帯電話を片手にした明の声が部屋いっぱいに響く。

『ごめん、急患が入った。今夜は戻れそうもないんだ。本当にごめん』

謝罪で始まった光輝からの電話は、今夜の予定が全て無になるというもので。



(はぁ・・・・・・またか)
明は光輝に気付かれないようにそっと溜め息を吐いた。
こんな風に、忙しい光輝が急に家に戻れなくなる事は珍しくない。
故に「お詫び」と称して明にプレゼントの山が積まれる訳になるのだが。
それにしても、二人で暮らすようになってから初めて迎えた兄の誕生日。それを当日に祝えないのは残念だった。
(でもしょーがねーよなぁ・・・、今一番ガッカリしているのは俺じゃなくて兄貴だもんな・・・)
電話の向こうに残念そうな兄の顔が見えるような気がして、自分よりも光輝の無念の大きさを思った。
そして。
これは決して悟られてはならないが、明がホッとしたのもまた事実なのである。












「うげーーーっ!」

朝、思わず叫んだ視線の先にはメイド服があった。
なんだ、こりゃーっ!こ、こんなモンどっから・・・・・、ぐおっ!
メイド服を握り締めわなわなと震えていると、その下から、これまたどこから調達したのかネコ耳がついたカチューシャまで出てきたのには正直参った。
そして、とどめだ!とばかりに置いてあったのは、

「俺が帰ったらこれを着て、【お帰りなさいませ、ご主人様】という事」

光輝の字で書かれていたメモ。

(変態だ。大変な変態だ〜)

兄が大変態なのを忘れていた訳じゃなかったのに。何故スーツだなんて思い込んでいたのだろうか。
明は不穏なことが書いてあるメモ用紙を握り締め、自分が放った迂闊な言葉を今更ながら後悔した。
しかし約束は約束である。
夕方、食事の支度を済ませた明はメイド服を横目で見つつ、
( しょうがねーよなぁ・・・)
今日何十回言ったか分からない「しょうがねえ」を呟きながらカチューシャを手に取った。
男にメイドプレイをさせるなんて悪趣味以外の何物でもないが、これが兄の希望ならば仕方ない。
(うーん・・・もしかしてレースがひらひらが付いたカチューシャではない分マシなのか?)
ネコ耳をフニフニと弄りながらポジティブに物事を考える事にし、兄貴が喜ぶならしょうがねえ!よし!と明は腹を括ったのだ。


白いフリルの付いたブラウスに袖を通し、何だ?こりゃ??と首を傾げながらパニエを身に着ける。
手が届かねえと毒付きながらワンピースのファスナーを閉め、変態めと呟きながらフリル満載のエプロンの紐を後ろで結ぶ。
そして白黒ボーダーのニーソを履き、ネコ耳カチューシャを付けた。
兄が用意したものは全て身に着けた。

ネコ耳メイドの完成である。


その姿のまま明はリビングのソファの上にどっかり胡坐をかき、
(女って凄ェ・・・、よくこんなもん着ていられるよな・・・。足元スースーするし・・・)
フリルが揺れる裾をぼんやり眺めながら、真冬でも元気に生足曝け出している女子高生に尊敬の念を抱きつつ、
(はぁ・・・)
これまた今日何度吐いたか分からない大きな溜め息を吐いていたそんな時、光輝からドタキャンの電話が掛かってきたのである。









明はピラピラしたエプロンのフリルを摘みながら、さっきから謝ってばかりの兄を何とか元気付けようとわざと明るい声を出していた。


「ま、仕事じゃしょうがねーよ。兄貴の誕生日はまた今度仕切り直そうぜ。それでいいよな?」
『・・・本当にすまない・・・・・・』
「いいって、もう謝んなよ。それより・・・えっと・・・、この服はもう脱ぐけど、・・・いいよな?」
『・・・ぇ?・・・服って・・・・メイド服の事か・・・?・・・本当に着て・・・くれてたんだ・・・』

意外そうに光輝は言った。
(は?着てくれてたんだ・・・とはどーいう意味だ!?)

「な!なんだよ!着なくても良かったって言うのかよ!」

明の怒声が響く。
怒りは尤もである。
これを着る為に、自分がどんなに葛藤したか。
光輝以外にこの姿を見せないと分かっていても、どんなに恥ずかしいか。
嬉々として着ていない事だけは確かなのだ。

『いや、そうじゃないけど・・・。嫌がって着てくれないかと思っていたんだ・・・・』

光輝としても、明が着てくれる確立は半々だったという賭けに近いものがあったのだろうか。

「・・・約束・・・・したから・・・な・・・。それに誕生日だし・・・」
『うん・・・、ありがとう、俺の為に』
「あ、あほ・・・。つか、もう脱ぐぞ。んで、二度と着ねえからな」
『え?ど、どうして?』
「ったりめーだろ!?この格好は今日限りの限定バージョンだからな」

誕生日の日に帰ってこない光輝が悪い。とばかりの明の意地悪に、

「・・・そうか・・・それもそうだよな・・・仕方・・・ないな・・・」
「・・・ぇ??」

光輝はあっさり引き下がった。
(妙だ・・・、こんなにあっさり引き下がるなんて。もっとゴネると思っていたのに)
こんなにあっさり退いたのは、やはり自分に非があると感じているのだろうか。
(別に兄貴のせいじゃないのに・・・)
兄の気持ちを思うと可哀相になり、思わず、「いや、冗談だって。このメイド服、明日も着てやるから」と言ってしまいそうになる。
しかしここはグッと我慢した。
こんな恥ずかしい格好は誕生日当日以外お断りなのだ。

「ふぅ・・・・」

残念そうな光輝の溜め息が電話の向こうから漏れ聞こえた。

『明、それ脱いでもいいよ・・・。でもその前に一つだけお願い聞いて欲しいんだけど?』
「お願い?あ、まさか写メ撮って送れっていうんじゃねーだろうな?ダメだかんな」
『写メ?ああ、そういう手もあったね。いや、でもお願いって言うのは違うんだ。
実はそのメイド服は完全じゃなくてね。俺が帰ったら取り付けてあげようと思っていたんだけど・・・』
「はあぁ??って、ちょっと待てよ、兄貴が用意した物は全部着たって。何も残ってねえって」
『うん、そのアイテムは寝室のサイドテーブルの引き出しにしまってあるんだ』
「へ?」

引き出しの中に?何があるんだ?
明は携帯を握り締めたまま寝室に向かい、そしてサイドテーブルの引き出しを開けた。



「ぎゃーーっ!」



それを見た明は再び叫び声を上げた。















寝室のサイドテーブルの引き出し。

そこにあったのは、黒い毛がフワフワしたネコの尻尾だった。しかもただの尻尾じゃない。
バイブ付である。
否、この場合、尻尾付のバイブの方が正しいかもしれないが、この際どちらでも善し。
バイブを奥まで押し込んだら本当に尻尾が生えているみたいに見えるだろう代物がそこにあったのだ。
(なんじゃこりゃあ!!??へ、変態だ。大変な変態だ!兄貴め!こんなプレイを企んでいやがったのか!)
バイブを持つ明の手は、今朝メイド服を見つけたとき以上にわなわなと震えた。
そして兄が今宵帰れないことを不謹慎甚だしいが、「ありがとう、急患」と真剣に感謝したのだった。
しかし。

『明、その尻尾つけて』
「は??」

光輝の言葉に明はその場に凍りついた。

『自分で挿れてみて』
(そ・・・そんな)

『俺が挿れられないんだから仕方ないだろ?』
(じょ・・・冗談じゃない!無理無理無理!無理だから!)

光輝のとんでもない要求に声も出ない。金魚のように口をパクパクさせるだけ。

『なあ、明・・・、せっかくの誕生日に明と過ごせないどころか、せっかく着てくれたメイド姿も見られないなんて、俺が可哀相だと思わないか?』
(お、・・・思わない、思わない)

『明のカワイイ声、聞きたい・・・』
(聞きたくない、つか聞かせたくない・・・)

怒涛のように訴えかける兄の訴える言葉を聞きながら、明の頭の中はフル回転していた。

一体どうすりゃいいんだ!?
明日も着てやると言えば気が済むのか?
いや、まて。
そんな事を言ったら、この恥ずかしい姿を晒した上に、兄貴の手でこの尻尾を後ろに挿れらちまう。
ならばいっその事、今この場で自分で挿れるか。
いや、無理。
クソッ!他に何かいい考えはねーのかよ!


尻尾を掴みグルグルと考えていた明に、ふとある考えが浮かんだ。

そうだ!挿れたフリをすりゃいいんだ!
どうせ見えねーし、分かりゃしねーだろう。
よし!


『明・・・俺の話、聞いてる?』
「き、聞いてる・・・。兄貴の言いたいことは分かったから・・・。自分で・・・・挿れるよ・・・・・・・」

電話の向こうでクスリと小さく光輝が笑うのが聞こえた。

『明、今寝室だよね?』
「あ、ああ・・・」
『それじゃ、クローゼットの鏡の前に座って大きく足を拡げて・・・』
「う・・・ん・・・・」

そう返事はしたものの、明が向かった先はリビングのソファの上だった。先程と同じ状態でどっかりと腰を下ろす。

『用意できた?』
「ああ」
 『じゃあ自分で触ってみて。下着の上からゆっくりと。いつも俺が触るように・・・』

兄の囁くような声が耳を擽る。

『どう?淫乱な明のことだから、もう勃ち始めてるんじゃないか?』
「・・・ん・・・」

吐息のような声を出してみる。
兄には悪いが、思いの外色っぽく出た(ような気がする)自分の声に明は満足した。
(イける!これなら兄貴を騙し通せる!)

『ほら、段々膨らんできた・・・』
「やぁ・・・・・・・・・」

自分の演技力も中々のものではないか。そうほくそ笑んだ瞬間、

『明、嘘はいけないな。本当は触ってないだろ?』

見透かしたような光輝の声が聞こえ、

『寝室にもいないね、そこはソファの上だろ?』

何故分かった!?どっかで見てんのか!?
カメラか!何処かに隠しカメラでも取り付けてあんのか!
焦って思わず辺りを見回した。すると。

『カメラなんて設置してないよ』

またもや明の行動を見透かされ、

『明の喘ぎ声が本当か嘘かなんて俺には簡単に分かるんだよ』

勝ち誇ったように言われた。
確かに光輝なら、自分の嘘も簡単に見抜くだろう。明のことなら、明以上に知っているのだ。
浅はかな行動を取っても意味がない事に気付かされる。
(・・・・・・こうなったら・・・しょーがねー・・・よな・・・)
出来るか出来ないかは分からないが、もうやるより他道はない。

「ごめん・・・・・・・」
『いいよ、許してあげる。でも今度は本当に俺の言う通りにするんだよ』
「う・・・ん・・・」

明は言われた通りクローゼットに嵌め込まれた大きな姿見の前に移動した。
メイド服姿+ネコ耳を付けた自分の姿がありありと映し出される。

「・・・・っ・・・」
『さ、今度はちゃんと俺の言う通りにして。足を拡げて・・・』

光輝のイヤらしく囁く声に明の下肢がじんと痺れた。
おずおずと、今度は本当に足を大きく拡げメイド服のスカートを捲くり上げる。

『自分で触ってごらん・・・』

股間に手を持っていく。

『あれ?もしかして勃ち始めてる・・・?』
「ば・・・か、そんな訳ねえっつー・・・の・・・!」

その言葉とは裏腹に、明のそこは信じられないことに光輝の言う通り熱を持ち始めていた。

「っ・・・!」

息を呑む音が聞こえたのか。兄の要求は益々エスカレートして行った。
下着を脱げと言われ、片手で携帯を持ちながら、もどかしくもう片方の手で下着を下ろす。

『自分の姿を鏡で見てごらん』

恥ずかしがりながら顔を上げると、上気したようなエロい顔をした自分が大きく足を拡げていた。
スカートの中に硬くなりかけた性器が見える。余りの羞恥に思わず顔を背けると、やはり何処かでみているかのような光輝の声が窘めた。

『明、目を逸らしちゃダメだよ、ちゃんと見て』
「やぁ・・・・でも・・・・・」
『見ながら自分の擦って』
「で・・・きない・・・」
『できるよ。俺の手だと思ってやってみて』
「・・・ん・・・・」

羞恥に塗れながらも、明は自分のものを擦り上げた。兄がいつも触るみたいに。

「・・・・はぁ・・・・ん・・・・」
『そう、上手だね、明・・・。こうやって擦るといやらしい汁をたくさん零すよね・・・』

ドクリと先端から蜜が零れる。耳まで犯されているのだ。それほど光輝の声は甘くいやらしい。

「・・・ゃ・・・・あに・・・き・・・・・・」
『ほら、もう下までグチョグチョだよ』

後孔に手を伸ばすと、光輝の言葉通り自分の零した液でヌルヌルしていた。

『後ろに指を入れるよ。・・・まずは一本・・・、ゆっくりとね』
「んぁ・・・・・っ!」

自分の指を後孔に押し込む。熱い肉壁が絡みつく。

「入った?でも一本じゃ足りないだろ?明は淫乱だからね・・・。もう一本増やして・・・」
言われるがままもう一本を入れ、「中で動かして」と光輝が言うと同時に胎内で指を蠢かせる。

「あ・・・・やだ・・・・・ああ・・・っ!」

指が前立腺に触れ、明は身悶えた。

『ああ、明のイイ所はここだね。もっと擦ってあげるよ・・・』
「ああっ・・・・やめ・・・・あにき・・・・っ・・・・・」

擦っているのは確かに自分の指なのに、光輝の意地悪な指が乗り移ったかのように自身の内を責め続ける。
触ってもいない性器の先から次々と透明な液が溢れる。

『ここ苛められるの好きだよね、明って』
「あ・・・・ダメ・・・・だって・・・・っ、ふ・・・・・ん・・・・」
『イッちゃいそうだね・・・、でもまだダメだよ・・・。明、指を抜いて』
「・・・・・っ、・・・ぅ・・・・」

兄に命じられ、自分を犯していた指を抜く。
物足りないと伝えるように後孔が収縮していた。

「兄貴・・・・・」
『わかってるよ、もう我慢できないんだろ?」
「う・・・ん・・・・」

尻尾付きのバイブを手に取り、粘着性の高いローションをもどかしく塗りつける。

『それじゃ挿れるよ・・・。挿れる所、ちゃんと見て』

小さい穴にずぶずぶと埋め込まれていく様を鏡で見るように強要され、羞恥で身体が震えた。
しかし明にとってはそれさえも快感だ。
鏡を見ながらゆっくりと押し込む。

「・・・ふぅ・・・・・ん・・・」
『全部入ったらスイッチ入れるよ』
「うん・・・・・、っあ・・・!や・・・・・、ん・・・・ああっ・・・!」

胎内で激しく玩具が暴れ出し堪らず腰を揺する。

「・・・・にき・・・・・しっぽ・・・・が・・・・・」

それは卑猥な光景だった。
尻から生えた尻尾が明の動きに追従してゆらゆらと揺れているのだ。


「あに・・・き、・・・ひっ・・・・・・・・・・」
『尻尾、気持ちイイ?』
「い・・・い・・・・よ・・・・兄貴・・・・・・・」
『明・・・・はぁ・・・・カワイイよ・・・・・・』

耳元で聞こえる息が荒い。
きっと光輝にははっきりみえているのだろう。
鏡の前で大きく足を割り先端から露を零しながら尻尾を揺らめかせている淫靡な姿が。
そう思うと堪らなく興奮した。光輝の熱っぽい声は更に明を狂わせる。

「あにき・・・・すき・・・・・だよ・・・・・・・・・」
明は手にした玩具を光輝だと思い激しく抽挿した。
先から滴り続けている粘液が棹を伝い流れ、挿れた玩具に混ざりぬちゃぬちゃと卑猥な音を出している。

『明・・・・、・・・あきら・・・・・』
「・・・ひ・・・・・ぁ・・・・・っや・・・・・・・・あに・・・・き・・・・も・・・出る・・・・・・・・」
『イって・・・・・いいよ・・・・はぁ・・・・俺も・・・・・イく・・・から・・・』
「兄貴・・・・あにき・・・・・っ!」

玩具をぐっと奥まで押し込んだ瞬間、

「っぁああ・・・っ!」

下肢が大きく跳ね先端から白濁を放った。
『ぅ・・・っ』

電話の向こうでも微かに兄の呻き声がした。








荒い息が治まった頃、ポツリと光輝が呟いた。

『明・・・気持ち良かったか・・・?』
「う、うん・・・・・・・・・」

嘘ではない。
光輝の声に、手に嬲られて射精したのだから。
でも。何か足りなかった。
いつも隣に感じている光輝の温もりが無かったせいなのか。

『本当に残念だよ・・・。この手で明を苛めてあげたかったのに・・・』

光輝の声は心底悔しそうで残念そうで寂しそうで。
だから。
その声に憐れみ、

「ったく、しょ、しょーがねーなー、・・・明日もこれ着てやるから元気出せって」

明がこんな迂闊な発言をしてしまったのも無理ない事だったかもしれない。

次の日喜び勇んで帰って来た光輝に、それこそ足腰立たなくなるまで責められてしまう事など、今の明には知る由もない。




兄貴、お誕生日おめでとう。つか誕生日にTELえっちかよ^^;いろんな意味でゴメンなさい。
目指したのは『甘エロ』 しかし、出来上がったのは『バカエロ』
いつか光輝自身の手で、明に尻尾を付けられる日が来る事を祈ってます。


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