電車でGO!
















キャディラックの後部座席で
さっきから全然変わらない景色をぼーっと眺めていると、隣から
「ふぅ・・・・・」
少し苛立ったような溜め息が漏れ聞こえた。

横を向くと、高級なシートに身を預けたルキーノが、
渋い顔で前方の景色を睨みつけている。

「おっかねー顔すんなって、ルキーノ。しゃーねーじゃん」
な?・・・・とルキーノの目を覗き込むように言うと、
運転席に座っているルキーノの部下が小さく後ろを振り返り、
「申し訳ありません・・・」
と、自分が悪いわけではないのに、そう言って頭を下げた。

「いや、あんたの所為じゃないって、この渋滞は」
「・・・・・ああ、そうだ。気にしなくていい」

苛立ちを態度に出てしまった事を反省するように
ルキーノは柔和な眼差しをバックミラーの部下に向けた。

そう、誰の所為でもないのだ。この渋滞は。
強いて言えば、悪いのは『運』である。
ラッキードッグと呼ばれる俺にだってこういう時は、あるのだ。

「事故け?」
「ああ、さっき救急車の音が聞こえたから多分そうだろう」
「それにしても動かねーよなー」

取引先の担当が時間に煩いと聞いたので、ルキーノと2人で早目に本部を出た。
だから、まだまだ時間的余裕はあるのだが、一ミリも動かないこの状況が続けばこの先はどうなるか分からない。

「なぁ、ルキーノ。提案なんだけどさ」
「ん?なんだ?」
「あそこに駅が見えるだろ?」
俺は、「ほら」と、窓の外を指差してそう言った。
だからどうした、それがなんだ?そんな顔でルキーノが一瞬俺を見たが、何を言いたいのか分かったのか、眉間にしわを寄せる。
「・・・ジャン、まさか・・・・」
「そ。そのまさかだ。電車で行こうぜ」
「馬鹿を言うな。ダメだ、却下だ」
俺のナイス提案は、馬鹿と言われた上に二重に否定された。酷いぜ、ルキーノ。
・・・・・ま、ルキーノが反対する理由は分からないでもない。時期カポと称されている俺の安全面を考えての意見だ。
しかし、だ。
そもそも急な予定変更で、
まさかCR:5の幹部がちんまりと電車で移動なんて誰も考えないだろうし
ていうか、今は別に何処と揉めている訳でもなし、
何よりこのままジリジリと待っていても精神衛生上非常によろしくない。
運悪く嵌った渋滞の窓から、運良く駅が見えている。
今の時間帯ならきっと空いているだろうし。
だからさ、たまにはいいんじゃね?電車なんて久しぶりじゃん。

そう言ってニィと笑うと、
「ガキか・・・」
ルキーノは呆れたように苦笑を零し、少しだけ考えてから、
ま、仕方ないなと、俺に同意し、
部下とは目的地で落ち合うことにして、俺達は車を降りたのだ。







「うへー」

平日の昼間の駅はガラガラに空いている・・・・・という俺の予想を裏切って、
混雑・・・というよりも大混雑だった。

何故こんなに人が溢れているんだ?
あまりの人の多さに唖然としていると、『スト』という言葉が行き交う人の口から漏れ聞こえた。
俺達がこれから乗り込む路線は動いているから
ストにあった乗客がこちらに流れて来ているのだ。

「ワーオ、満員電車なんて久しぶりだぜ」

ホームではしゃぐ俺と渋い顔をしているルキーノの前に、電車は滑りこんで来た。








 ★ ★ ★ ★







やばい。

やばいことになった。

俺は焦っていた。
それも「かなり」だ。

何故電車で移動しようなどと言ってしまったのだろう。
もし過去に戻れるならば、数分前の自分に「電車はやめておけ」と言ってやりたい。

この動く箱の中に今何人乗っているか知らないけれど、
多分というか、絶対、一番困った状況に置かれているのは、
俺に違いない。







電車の扉が開くと、ルキーノは俺の手を引き人並みを押し退けるように車内に進み、
反対側のドアの隅まで俺を連れて行った。
そして、誰の目にも触れさせたくないとばかりに俺の前に立ちはだかり、
片手は扉に、そしてもう一方の手は俺の腰を抱きかかえた。
なんだ、このあからさまに抱き締めて守ってます、みてぇな体勢は。
こっ恥ずかしい気持ちでいっぱいになり、おい、体勢を変えろと言いかけたが、
満員電車である。ぎゅうぎゅうである。すでに身動きがとれない。
いたしかたなく、俺はルキーノの腕におとなしく収まってやった。

やがて発車のベルと同時に電車が動き出し
その数分後、ありえない事態が
俺を襲った。


何があったかって?
実は、

満員の電車内で、

・・・・・・・・・・こともあろうに、


たってしまったのだ。



何がって、



だから、


チンコが、だ。





明らかな中枢性勃起。
あ、中枢性勃起っつーのは、性的な想像をすることで大脳にその刺激が勃起中枢に伝わり・・・、
つーか平たく言えば、エロい雑誌を見たり、エロいこと考えたりすると勃っちまうだろ?あれだ、あれ。

んで、俺がこんな状態に陥ってしまったのは、
今、俺の前に立っているルキーノの
【匂い】が原因だった。

ルキーノから香る甘いトワレ。
その香りが満員で熱気ムンムンの電車内で、変化した。
クンクン・・・・うわぁ・・・なんかやべえ・・・・・・これは危険だ。危険すぎる。
そう思った時には既に遅く、俺の鼻腔はベッドの上で抱かれている時と同じ匂いに包まれていた。
セックスそのものを連想させる官能的な香りがルキーノから立ち上り、俺の顔は火照るように熱くなって心臓もバクバクいい始めた。
それだけじゃない。

『ジャン、凄く濡れてるるぞ・・・・』
『エロい身体だな・・・・』
『何度でもイかせてやるよ』

なんてこった。
甘い香りは鼻だけでなく脳も刺激し、おまけに幻聴まで聞こえる始末で。

その結果。

俺のチンコは勃起してしまったのだ。



「しかし凄いな、これは・・・」
満員電車なんて初めての体験だ・・・と言いながら、ルキーノは呑気に周囲を見回し、俺に「な?」と同意を求めた。
「ん、・・・そうだな」
本当はそれどころではなかったが、平静を装って答えた。
こんな場所で欲情してしまったなんて恥ずかしすぎる。
絶対に、絶対にルキーノに知られてはいけない。


俺は、鼻から息を吸い込むことを止めた。
マヌケ面に思われようがこの際構ってはいられない。口を開いて、そこから酸素を取り込むことに集中した。・・・・・のが不味かった。
はぁはぁと浅い息を繰り返し、時折腰を捩らせる。そんな俺の様子に目の前のルキーノが気付かない訳がない。
「ジャン、どうかしたか?具合でも悪いのか?」
ルキーノが耳元で囁き、俺の背中がゾクリと震えた。
ぷぎゃー!や、やめろ。耳元で喋るんじゃねえっ!
と、丁度その時、
「ぅおっと・・・!」
電車がカーブに差し掛かり、バランスを崩した俺はルキーノの太腿に硬くなったチンコを押し付けてしまった。
「っ・・・・!」
「・・・・・・・ジャン、おまえ・・・・・・」
気付かれた!


・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・嗚呼、穴があったら入りたい。
穴がなかったら自分で掘って掘って堀まくり、深く深く潜りたい。

「いやぁ、なんつーか、その・・・何でかな?あはははは・・・・」
半分自棄気味に笑うと、ルキーノは何を考えているのか読めない瞳で黙って俺を見下ろしていた。
ったく、こんな場所で一体何に欲情したんだ?と呆れているのか。
それとも哀れなヤツだと思っているのか、
ま、ど何にしろ節操が無いヤツの烙印を押されているのは間違いない。

引き攣った笑いを浮かべる俺の顔を黙って覗き込んでいたルキーノの口の端がわずかに上がったと思うと、
驚いたことに、俺の腰を抱き込んでいた手が熱を持った下半身に触れた。

「っ!?」

思わず息を呑んだ。
嘘だろ!?
ルキーノの大きな手がズボンの上から俺の硬くなったチンコを確かめるようにやわやわと揉んでいる。

「お、お、、おい、やめろって・・・」
突然の事に驚きながら、俺は声を潜めて抗議した。
見えにくい位置にいるとはいえ、周りには大勢の乗客がいるのだ。
しかしそんな事はお構いなしとばかりに、ルキーノの手は淫らに動き続ける。
中枢性勃起ででかくなったチンコに物理的刺激を与えられたら堪ったものじゃない。
くそ、やめろ、こんな場所で・・・
俺は淫らに動くルキーノの手を掴んだ。が、
ルキーノは俺の手をものともせずに、更に厭らしく撫で回した。
「ちょ・・・・、マジでやめ・・・って・・・・・・・・ぇっ!」
そしてあろうことに、ルキーノは俺のズボンのファスナーを下ろし、育ちきったチンコを下着越しに握ったのだ。
「なに・・・考えてんだよ・・・も・・・、やめろよ・・・・」
「今ここでやめて辛いのはお前だろ?」
耳許で囁きながら、ルキーノはゆっくりとチンコを上下に扱く。
「・・・っ!」
やめろと口では抗ったが、実際は堪らなく気持ちよかった。
羞恥と快感の挟間で俺の身体はどんどん昂ぶっていく。
こんな場所でチンコをでかくしてそれを擦られて昂ぶってしまうなんて信じられない。いや、こんな場所だから逆に燃え上がってしまうのか。
ああ、何かもう頭の中がグチャグチャでよくわからない。。

俺が黙ったことを良い事に、ルキーノは益々大胆に俺に触れてきた。
「いつもより感じているみたいだな・・・・・、凄く硬いし・・・・ヌルヌルだ・・・」
「ぁ・・・・・っ」
遂に下着をかいくぐり直接握られる。鈴口をグリグリと親指で撫で回され小さな喘ぎが俺の口から漏れた。
隣にいたオヤジがチラリとこちらを見た気配に、俺は慌てて口元を押さえる。
「おいおい、、声殺さないと気付かれるぞ?それとも見られたいのか?」
耳元で楽しげに囁く声に、俯いたまま首を横に振り必死に声を殺した。
ルキーノの太い指にチンコを挟まれ、プックリとした亀頭のふちをなぞられる。
「っ・・・・・ぅ・・・・」
裏筋を擦られ、その激しい快感に腰が震えた。
「相変わらず弱いな、ここ・・・」
「・・・は・・・ぁ・・・・・」
グチャグチャと淫猥な音がやけに自分の中で大きく響いて恥ずかしい。
恥ずかしいけれど。

これ以上我慢は限界だった。

俺はルキーノを見上げた。
もうダメだ・・・・・・イっちまう・・・・
そう目で訴えると、ルキーノは自分のポケットを探りハンカチを取り出し、今にも暴発しそうな俺のチンコを包み込んだ。
「イっていいぞ・・・・」

ルキーノから発せられる毒のような甘い匂いと、少し掠れたエロい声に頭の中が真っ白になり、
「んっ・・・・・・・・、っ・・・・んん・・・っ!」
俺は小さく呻きながら、ここが満員電車の中だという事も忘れ、ルキーノのハンカチの中にドクドクと精液を放った。


おまいら仕事忘れてないだろうな?
ていうか、タイトルを【電車でGO!】にするか【発射オーライ】にするか真剣に悩んだアフォです。
せっかくなので、【発射オーライ】はこの2人のその後、
WEB拍手のミニ妄想で使うことにしてみました^^;


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