一糸纏わぬ二人の行為を、壁に寄りかかったまま俺は黙って見ていた。









 
狂乱の夜














「・・・・っ、やあ・・・・・んん・・・・・・っ・・・・・・」

ベッドの上で切ない喘ぎ声を零しているのはジャンさん。
四つん這いになったジャンさんの腰を掴み、後からその尻にペニスを捻じ込んでいるのはベルナルドだ。

「ゃ、ああ・・・・っ」
感じる場所を擦られたのだろうか、ジャンさんが一際高い嬌声を上げた。

「気持ちイイか?ジャン・・・・・」
ふっと鼻で笑い、ベルナルドが同じ場所を何度も突く。

「・・・ゃ・・・んん・・・・、ベル・・・ナ・・・・っあ・・・んっ、も・・・・・イ・・・・イかせて・・・・・・」
息も絶え絶えになりながら、それでも必死懇願するジャンさんの掠れた声は俺の股間を熱く昂ぶらせる。

「イきたいのか?」
「イ、・・・イきたい・・・・・」
「そうか・・・・、じゃあ・・・・」
「んっ、・・・・・・ああっ・・・・ぅ・・・・・っ!」

ベルナルドは不意に体位を変えた。
獣のように這わせていたジャンさんの身体を後に引き、自分の脚の間に座らせたのだ。
背面体位となったジャンさんの尻の穴に、ベルナルドの滾ったものがぎっちりと入り込んでいるのが自ずと俺の目に映る。
自身の重みでより深くペニスを銜え、ジャンさんは微かに後を振り返り「くる・・・・し・・・・・・」とベルナルドに小さく訴えた。が、掴まれた腰を揺さぶられる事でそれは嬌声に変わった。

膨れ上がったジャンさんのペニスの小さな窪みから先走りの液がダラダラと溢れているのが見える。
ペニスはもうベトベト。
それでも達せないないのは、ペニスの根元を皮の紐で縛られているからだ。

「はぁ・・・・・あっ・・・・!」
凄まじい快感が襲ったのか、ジャンさんの身体がベルナルドの上で跳ねる。

「も・・・・ゆるして・・・・・・」
「赦してくれ?・・・ふっ、それじゃまるで俺が虐めているみたいじゃないか・・・・・」

ベルナルドが意地悪く笑み、更に腰を突き上げる。

「ぁああ・・・・っ、・・・・・・んん・・・・・」
「それに、ゆるして・・・という割には、自分で腰を動かしているみたいだしな・・・」
「そ・・・・・、そんな・・・・・、うそ・・・・っああ・・・・」
「嘘だと思うなら、そこにいるジュリオに聞いてみろ」

ジャンさんが顔を上げ、快感に潤みきった瞳が俺を捉えた。

「・・・ジュリ・・・・・オ・・・・・」
「っ・・・・・」

吐息に濡れた声と縋るような瞳に、また俺の股間は熱くなった。







『GDの件が一段落したらジャンを一緒に調教しよう』
ベルナルドの甘い誘いに俺が乗ったのは、もちろんジャンさんに触れたかったからだ。
デイバンに戻ると、俺はベルナルドの指示の元、GDの奴らを片っ端から殺しまくった。
奴らを壊滅させるのが早ければ早いほど、俺がジャンさんに触れる時期も早まる、そう思って。

ナイフが肉を裂き、抉る。血がどくどくと流れ出す。
今まで生きていた人間が動かないただの肉塊になる。
噎せ返るような血の匂い。
屍体の耳を削ぎ落とし腹を割き腸を抉り出す。気分も、そして身体も高揚し、血溜まりの中白濁をぶちまける。
それが当たり前だった。
しかし、そんな気持ちが沸くことはなかった。
何故ならば、俺は見たからだ。

逃亡中の山小屋で、ベルナルドの手で胸を愛撫されてべとべとになったペニスを自分の手で扱くジャンさんを。
俺が見ている事を知り、恥ずかしさに全身を震わせそれでもその手を止めることができず射精したジャンさんを。
あの光景は今でも目に焼きついている。忘れられる筈がない。
あれだけでも凄く興奮した。
でも、敵を壊滅させれば、あの時見るだけしかできなかったジャンさんに触れることができるのだ。
屍体なんて、つまらない。


抗争が一段楽した或る日、「今夜零時過ぎに俺の部屋に来てくれ」
擦れ違いざま小声で告げられ、俺は時間通りベルナルドの部屋のドアを叩いた。
ドアを開けた瞬間、濃密な空気に自分の身体が包まれたのが分かった。
狂乱の夜はここから始まったのだ。










「いやらしく腰を動かしているのはどっちだ?ジュリオ」
嗤いながら再びベルナルドが問い、今夜俺はこの部屋に入って初めて声を発した。

「ジャンさん、です」

俺の答えにジャンさんの頬が羞恥に赤く染まる。

「そんな・・・・・・・、・・・っ!」
抗議しかけたジャンさんだったが、
俺の視線が股間に注がれていることに気付くと、今までの淫乱ぶりを隠そうとするかのようによたよたと脚を閉じかけた。
しかし、

「閉じるな」
ベルナルドの静止の言葉にジャンさんの動きはピタリと止まる。

「いい子だな、ほら、もっとジュリオがよく見えるように開くんだ」
「・・・・っ・・・・」

自ら脚を拡げさせる指示を出した。

「見られるのは大好きだろう?」
「んっ・・・・」

ジャンさんは恥ずかしそうに俺に顔を背けながら、それでもおずおずと股を広げた。
ベルナルドの命令にジャンさんは逆らえないのだ。
ぶるりと打ち震えるペニスが露になる。
その先端から、触れてもいないのにぷっくりと蜜が出てきたのを俺は見逃さなかった。
淫らな姿を見られたり言葉で責められるとジャンさんの身体はひどく興奮する。
今だってただ見ているだけなのに、ジャンさんのペニスはひくひくと震え、透明な液が次々と溢れ出すのだ。

「ジャン、さん・・・・、ものすごく、感じています・・・ね・・・・・・・」
いつものように言葉でジャンさんを嬲り始めた。

「・・・・・・見ているだけ・・・なのに・・・・・・こんなに・・・・・・ヒクヒクしてる・・・・・」
「っ・・・・!」
「・・・すごい・・・・、どんどん溢れて、きます・・・ね・・・・」

俺の言葉に煽られるように、淫猥な液が垂れ流れる。

「ゃ・・・・・・だ・・・・・」
聞きたくないとばかりにジャンさんは頭を振るけれど、その身体が悦んでいるのは一目瞭然だ。
動いていると指摘されて止まっていた腰も、もぞもぞと動き始めている。

「やっぱり、自分で動かしてるじゃ・・・ないですか・・・・・・」
「ゃあ・・・・・っ・・・・・、い・・・わない・・・・・・・で・・・・・・」
そう言いながらも、ジャンさんの動きは止まらなかった。一度灯った官能の炎が、淫乱なこの身体から簡単に消えるはずもない。

「とって・・・・・・まえの・・・・・、と・・・・・・って・・・・・・」
根元を戒めている紐を取ってとたどたどしい口調でねだる。
「と・・・って・・・・、いかせて・・・」とうわ言のように声を震わせているジャンさんに、ベルナルドは

「そんなに紐を解いてもらいたいのか・・・?・・・・・・だったらジュリオに頼んでみるんだな」
と優しい口調で囁いた。
ベルナルドの言葉に、ジャンさんは羞恥で赤く染まった顔を必死で上げた。

「・・・ジュリ・・・・オ・・・・・、・・・・・ねがい・・・・とって・・・・・・」
「っ・・・・!」
哀願する切ない声に欲情が煽られる。
「・・・・ジュリオ・・・・・」
ジャンさんの声に導かれ、俺はベッドへ乗り上げた。


ビクビクと震えるジャンさんのペニスを目の前に、嬉しくて思わず顔が綻んだ。
根元に手を伸ばすと、「っ!」ジャンさんは小さく息を呑み、縋るような視線を俺に向けた。
その目は「早く取って」と訴えていて。
打ち震える身体とペニス。もう本当に限界なのかもしれない。
すぐに解放してあげるのは簡単だ。
でも。
俺はもっと快感に喘ぐジャンさんが、見たかった。

だから、俺はジャンさんのペニスに手を伸ばし、皮の紐の上から昂ぶったジャンさん自身を掴み、
そして先端を口に含んだ。

「っやあああ・・・・・・っ!」

ようやく許しをもらい射精させてもらえると思っていたのに、更なる責めを与えられたジャンさんは絶叫に近い声を上げた。
ちらりと上を見ると、ジャンさんが咽び泣いている。その姿に心の中で小さく謝る。

(ごめんなさい、ジャンさん)
(でも俺、焦らされて悶えて喘いでいるジャンさんの姿が大好きなんです)

大好きなジャンさんに、こうやって触れられることができるなんて夢にも思っていなかった。
自分は死体にだけ欲情し、人の温もりなど知らずに一生を終えるのだと思っていた。
でも今は、
びくびくと震えるペニス。
物欲しげに蠢く蕾。
弄れば尖り赤く色づく乳首。
熱い吐息。
全て俺の手の中にある。
嬉しくて嬉しくて、嬉しくて。
ジャンさんを味わいたくて。

口に含んだペニスを丁寧に舐めしゃぶった。

「うああ・・・・・っ、や・・・・・・っ・・・・・ジュリ・・・・・・・・あああ・・・・・・」
「イイん・・・ですか?・・・ジャンさん、ここ、気持ち・・・・イイ・・・?」
「っひ・・・・・も・・・・やめ・・・・・・ジュリ・・・・・・・・オ・・・・・・おかしく・・・・・なる・・・・っく・・・、いく・・・・・っ」

その時ジャンさんの身体が一際大きく跳ねた。
膝をガクガクと震わせている。達した、と思った。
でも不思議なことに精液が出ていない。
ペニスから口を離しジャンさんを見上げると、ビクビクと身体を痙攣させたままベルナルドに身体を預けていた。

(どうしたんだろう・・・・?)
すると、
「ふっ・・・」
頭の上でベルナルドが喉奥で笑った。

「ドライでイったか・・・」
「ドラ・・・イ・・・?」
「ああ」

ベルナルドは頷き、精液を出さなくても女のように達せるのだと俺に説明してくれた。
ようやく身体の震えが止まったジャンさんの顔を覗き込む。頬に残る涙の痕。
(泣くほど気持ちよかったんだ・・・・・・、俺の口・・・・・・)
ジャン、さん・・・・・小さく呼びかけてみたが反応はない。もしかしたら気を失っているのかもしれない。
ジャンさん・・・・・
俺は涙の痕にそっと舌を這わせた。
涙の味が舌先に広がる。
・・・・・・」
ジャンさんの瞼がピクリと動いたが、目を開ける気配はなかった。

目を覚ましたら、今度は俺が、もっともっと気持ちよくして啼かせてあげます・・・・・

そう心の中で思いながら、俺はジャンさんの瞼に小さく唇を落とした。



以前書いた【半月の夜】の続きというか後日談
調教というよりも、二人ともジャンさんのエロい身体が好きで好きで堪んない!
という感じですかね(^^;)


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